2009年10月1日木曜日

感染列島

新型インフルエンザがまだまだ流行っているようなので、「Yahoo!レンタルDVD」という宅配DVDレンタルで感染列島を借りてみました。
7月ごろにレンタル開始された準新作です。
某檀さんが相変わらず棒読み大根でした・・・。

新型インフルエンザももちろん無視できない問題ではありますが、本当に懸念すべきはインフルエンザではないと思っています。
2002年に香港を中心として流行した「SARS(重症急性呼吸器症候群)」こそ真の脅威ではないでしょうか?
SARSという聞き慣れない名称と、日本では流行しなかったので詳細をご存じない人も多いかと思いますが、SARSの実態はコロナウイルス、つまり私たちが普段日常的に罹患している風邪ウイルスの一種です。
しかし、多数の死者を出したSARSはただの風邪ではありません。

インフルエンザは流行するとワクチンが作られるのに、風邪のワクチンが作られない理由をご存知ですか?
風邪を引き起こすコロナウイルスやライノウイルスが、インフルエンザウイルスよりも遥かに変異しやすいためです。
遺伝情報がインフルエンザウイルスよりも複雑なために増殖の際に変化しやすく、既に数百種類が存在し、また日々増え続けています。
数百種類分のワクチンを作るなど到底対応しきれません。
苦労して作ってもすぐに異なる亜型が流行り始めるので効かなくなってしまいます。
ですから、一般的なワクチンの製法とは異なる、様々な亜型に対応できる特殊な核酸ワクチンというものが必要になります。
当該ウイルスの遺伝情報の一部を利用した無害なウイルスを人工的に作り出し、免疫反応を得るというものですね。
ただしこれは遺伝子組換え農作物の安全性が問われているように、予想外の副作用やアレルギー反応を誘発する懸念もあり、現代医学ではまだまだ発展途上で難度が高いと言えます。(参考:Drug Delivery System 2008年23巻2号 「感染症ワクチンに対する将来展望」こちらが核酸ワクチンについて分かりやすく解説されているので是非お読み下さい。)
さらに核酸ワクチンを作ったとして、「多少変異しても効果がある」という程度のものです。
効かない亜型が出てくればもちろん作り直しです。
感染力が高く変異が速いとワクチンの開発や生産、接種が追いつかず、そのイタチごっこが延々と続くわけです。

感染力が高く、ワクチンを作るのが難しい、実は非常にしぶといウイルスなのですが、それでも風邪程度の症状だから大事にならず済んでいました。
ところがとうとう症状まで重いコロナウイルスが出てきました。
それがSARSなんです。
SARS以前に症状の重いコロナウイルスが人類間で流行した記録はありません。(90年前に流行したスペイン風邪というのはインフルエンザです)
人類が遭遇した初めての脅威だったんですね。
映画感染列島では、最初はインフルエンザかと思われた感染症にワクチンが全く効かずにパニックが起きていきますが、まさにそんな感じだったのかもしれません。

幸いSARSは局地的な流行で収まりました。
ですが私はこれで終わるとは思っていません。
SARSは野生動物にも感染しますので(というか、野生動物から人間に感染した)、今も私たちが知らないところで感染と変異を繰り返している亜型が二度三度四度~と繰り返し人類の前に現れるはずです。
野生動物まで含めて根絶しない限りウイルスは存在し続けますし、異種間の感染がいつ起きるかという問題でしかありません。
SARSよりもさらに感染力や致死性の高いウイルスになっているかもしれません。
理論上では致死率50%の凶悪なウイルスでも、R0=2(再生産率、1人から2人に感染する)以上なら自然収束は難しい。
死んだ数と同数以上の感染者が発生するからです。
人類がウイルス感染症を防ぐ手段は、一般的に「感染者の遮蔽」「消毒」「ワクチン」「抗ウイルス剤」などがありますが、インフルエンザウイルスやエボラウイルスでさえ、予防の決め手となるワクチンの開発が容易であるという点においてはコロナウイルスよりもだいぶマシかもしれません。
また、コロナウイルスほどではありませんが変異しやすく、感染力が高いライノウイルスなどの致死性の高い亜型が今後出てきてもおかしくありません。

ただ、私たちが今からできることもあります。
それはSARSの亜型が流行した場合のことを想定して、できるかぎりの備えをしておくことです。
SARS自体の主な症状は肺炎および呼吸窮迫症候群ですので、人工呼吸器を生産しておくのもいいかもしれません。
病院で使用されている人工呼吸器には心肺モニタなどが付属していて複雑化、高額となっていますが、基本的には呼吸さえ確保できればいいので、よほどの重症でない限りは1台2万円程度のコストで作れる簡素な仕組みのものでも役目を果たす事が可能です。
感染者が大量に発生すれば当然病床が足りなくなりますから、在宅治療などまで見据えれば簡易的なものでも少なからず役に立つでしょう。
もちろん、消毒液ぐらいは個人で常備しておくべきです。
こういう普段あまり使わない物は流通量が限られているため、我が家では常に2年分程度を買い置きしています。
感染しない、させないために、いざとなったら他人と直接接触することなく生活できる環境を整えておくことも重要です。
在宅のままでも遂行可能で収入や生活に支障をきたさないような自分なりのビジネスモデル、就業形態を作っておき、口座からの入出金や家族友人への連絡などオンラインで可能なことはできるようにしておく、などですね。
人間ですから娯楽も必要でしょうね。
仮に人類全体がそういったことを心がけて普段から準備できていれば、いざそのような状況になったときでも早期に解決できる可能性は高いですが、現実的ではありません。
実際にはそこまでの予測を立てられるほどの知性を持たない人が大部分を占めていますから・・・。
多くの人は気にも留めていないのだと思います。
で、事が起こってからそれまでおくびにも出さなかった自称専門家や、グラフ資料や報道記事をかき集め分析したつもりになっている声だけは大きな人たちが訳知り顔で騒ぎ始めるというのが世の常です。